ソウル大学にて講演会「Humanitext:AIが切り拓く人文学の未来」を開催
3/16/2026

2026年3月9日、ソウル大学校AIデジタル人文学センターおよび哲学思想研究所の主催により、講演会「Humanitext:AIで切り拓く人文学の未来(Humanitext: Shaping the Future of Humanities with AI)」が開催されました。
本講演会では、Humanitextプロジェクトの中核を担う3名の研究者が登壇し、AI技術を西洋古典文献学へ応用する試みについて、それぞれの専門的知見から最新の進捗を報告しました。
ソウル大学校にて行われたディスカッションの様子
各発表の概要
1. 西洋古典文献プラットフォームの拡張と精度向上
岩田直也(名古屋大学 / 国立情報学研究所) 岩田氏は、西洋古典文献のためのAI駆動型プラットフォーム「Humanitext Antiqua」の最新動向を報告しました。特に、文脈を考慮したクエリ再構成によるRAG(検索拡張生成)の精度向上や、コーパスを現在の1,000作品から2,500作品へと大幅に拡充する計画について詳述。また、自動化されたWikidataリンクと専門家による校閲を組み合わせた、スケーラブルなメタデータ付与のワークフローを提示しました。

2. 解釈の地平を広げる:テキスト、参照、そして時空間コンテクストの接続
田中一考(桜美林大学) 田中氏は、西洋古典テキストのベクトルコーパスを拡張する2つのシステムを紹介しました。「Humanitext Reader」は、一次文献と古代の注釈、現代の研究文献を構造的に繋ぐ参照フレームワークであり、「Humanitext GEO」は、Linked Open Dataを用いてテキストを時間・空間の軸で統合し、都市を中心とした通時的・共時的な探索を可能にします。これらは、AIによる新たな解釈インフラの可能性を示すものです。

3. 知識の統合に向けた苦闘:Humanitext Schemaの構築
小川潤(東京大学) 小川氏は、テキストソースと広範な知識をいかに接続するかという、スキーマ構築における試行錯誤を共有しました。意味的な繋がりはベクトル類似度だけでは捉えきれないため、知識グラフを用いてテキストとコンテクストを統合する手法を提案。TEIベースのDTSや文字レベルのRDF表現など、テキストと注釈の関係をモデル化するための具体的な実験結果について報告しました。

人文学とAIの共生に向けて
講演後の質疑応答では、ソウル大学校の李尚曄(リ・サンヨプ)教授による司会のもと、参加した研究者や学生と活発な議論が交わされました。古典文献という伝統的な領域にAIを導入することで、研究者の営みがどのように変容し、いかに新たな問いを立てうるのか。本講演会は、日韓の研究交流を深めるとともに、デジタル人文学の未来を展望する貴重な機会となりました。